エネルギーマネジメント

2024年に動き出す容量拠出金を想定した各社の動きに注目

中長期的な供給力不足の懸念から、以下の目的のもとで2020年度より「容量市場」が導入されました。

・電源投資が適切なタイミングで行われ、予め必要な供給力を確実に確保すること
・卸電力市場価格の安定化を実現することで、電気事業者の安定した事業運営を可能とするとともに、電気料金の安定化により需要家にもメリットをもたらすこと

この「容量市場」においては、小売電気事業者および一般送配電事業者、配電事業者が「容量拠出金」を「容量市場」の市場管理者である広域機関へ支払わなければなりません。
1回目の請求(4月分)は実需給年度の7月(例:2020年度メインオークションの場合は2024年7月)となります為、2024年度より、「容量拠出金」の支払いが発生する事になります。

引用:電力広域的運営推進機関

この小売電気事業者等が支払う「容量拠出金」の金額について実需給2024年度分は以下の通りです。

引用:電力広域的運営推進機関

つまり、この金額を電気代の基本料金に当てはめて単純計算をすると、1kwあたり1000円~800円という、とてつもない金額になります。
これは単純計算をするならば、300kw契約の高圧需要家においては、毎月の基本料金が30万円程度上がってしまう、という事態になりかねない、という事になります。

東電グループは既に自社内でこの容量拠出金について電気料金の原価に組み入れている事を公表しておりますが、これは大きな発電施設を持つ電力会社だからこそ可能な事で、一般的な発電施設を持たない新電力等においては、「容量拠出金」は出費にしかなりません。

現在、多くの新電力各社において、この「容量拠出金」について、今後どのような方針で進めていくのか検討しているようです。
電力需要家へ請求されることになった場合には、2024年度は上記の通り、基本料金単価が1000円~800円程度、値上げになる可能性があります。
あるいは「容量拠出金」を想定した料金メニューが登場してくるかもしれません。

本件については、当社で多くの電力会社へ問い合わせており、来期4月以降の傾向については、この11月ごろまで各社のメニュー、あるいは供給地域等に関する方針が出されてくる傾向の様でした。

高圧需要家に対する電気料金の仕組みとしては、過去に「トランス契約」という、現在の実量制(デマンド)ではなく、高圧施設の変圧器容量で契約電力が決まり、基本料金が決まる、という契約がありました。
この考え方としては、高圧需要家がどれほど電気を使っても、最大電力は変圧器容量を超えることはない、つまり電気を供給側からすれば、予め最大電力を想定した発電量を確保しておくことが出来る、というものでした。
今回の容量市場とは、この「トランス契約」と「実量制(デマンド)」を足して、それに取引市場を掛け合わせて電力供給側に適用したような内容に見えてしまいます。
勿論、安定的な電力供給を考えるならば、間違っているとは思いませんが、最終的な負担は全て「使う側」に負わされていく事を忘れてはなりません。

どちらにしろ、これから更にデマンドマネジメントの重要性が増していくことは間違いありませんので、電力のピークコントロールを疎かにせず、真摯に向き合っていく事で、実行した会社とそうでない会社の差が開いていくであろうと思います。

 

この「容量市場」は、2015年に開設された「電力広域的運営推進機関」という許可機関により行われます。

電力広域的運営推進機関(でんりょくこういきてきうんえいすいしんきかん、英:Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, JAPAN)は、電気事業法(昭和39年7月11日法律第170号)に基づき、日本の電気事業の広域的運営を推進することを目的として設立された団体である。日本の全ての電気事業者が機関の会員となることを義務付けられている。機関は、会員各社の電気の需給状況を監視し、需給状況が悪化した会員に対する電力の融通を他の会員に指示する。略称は広域機関(こういききかん)またはOCCTO(オクト)である。2016年7月の送配電等業務指針によると、発電電力の送電網への給電は、供給過多になった場合、まず火力発電の電気から絞り込まれ、その後、バイオマス発電、自然変動電源(太陽光と風力)、長期固定電源(原子力や揚水除く水力)の順で抑制される。
引用:wiki

容量市場の概要について詳しく知りたい方はこちら。
https://www.occto.or.jp/market-board/market/files/youryou_gaiyousetumei.pdf
容量拠出金について詳しく知りたい方はこちら。
https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2023/files/230626_youryou_kyoshutsukin_setsumeikai.pdf

過去の容量市場メインオークションの約定結果について知りたい方はこちら。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/075_06_03.pdf

容量市場に関するスペシャルサイトはこちらになります。
https://www.occto.or.jp/capacity-market/

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